生活相談員として働くことになったけど、何をする仕事なんだろう?
介護職員やケアマネジャーと比べて生活相談員の仕事はあまり知られていないため、
「事業所内での自分の役割が分からない」
「雑用に追われて1日が終わってしまう」
と悩みを抱える新人相談員も多いのではないでしょうか。
この記事では、5年間デイサービスの生活相談員をしている私が、仕事内容を詳しくお伝えしていきます。
あなたが生活相談員としての一歩を踏み出す、一助となれば幸いです。
生活相談員は介護サービスのコーディネーター
介護施設は、介護が必要な高齢者をお預かりするためだけの場所ではありません。
利用者が抱える日常生活の課題を改善できるよう、介護サービスを提供するところです。
生活相談員には、所属する事業所において利用者に最適な介護サービスをコーディネートするという役割があります。
また、スタッフが協力してサービスを提供できるよう、各職種のまとめ役としての機能も果たします。
生活相談員が活躍する介護施設
介護老人保健施設には生活相談員ではなく『生活支援員』が配置されています。
仕事内容は似ていますが、老健はリハビリをして自宅に戻ることを目指す施設のため、退所に向けた支援を行うという点で違いがあります。
仕事の中心は相談援助業務
生活相談員は利用者に最適な介護サービスを提供できるよう、事業所の利用に関する相談援助を担当します。
- 利用者の生活状況やニーズの確認
- 個別サービス計画の作成
- サービス実施状況や目標達成度の評価
- 日常生活の支援とアドバイス
- 事業所内外での社会参加の促進
これらを通して、利用者の生活の質を高めることが仕事の目的です。
具体的な相談援助業務の内容を、私の経験を踏まえて以下に解説します。
受け入れの相談に対応する
利用希望者の基本情報を確認し、事業所の状況と照らし合わせて受け入れの可否を検討します。
確認が必要な利用希望者の情報
- 名前・年齢・性別
- 住所・連絡先
- 介護度
- ADLや認知症の程度
- 希望の利用曜日
受け入れ可否の判断材料の例
- 事業所の定員の空き状況
- 利用希望者のADLと施設の設備がマッチしているか(機械浴の有無など)
- 居住地が送迎範囲内か
9割はケアマネジャーからの相談ですが、ご本人やご家族から直接お問い合わせいただくこともあります。
当事者からの相談の場合 要介護認定を受けているか、担当のケアマネジャーがいるかについても確認が必要です。
『まだ要介護認定を受けていないけれど、介護サービスを使いたい』
という方には地域包括支援センターを紹介し、介護保険の申請と同時進行でサービスの検討をしてもらいます。
『要介護認定はあるけれど、担当のケアマネジャーはいない』
という方には、スムーズに介護サービスが利用できるよう適切な機関につなぎましょう。
適切な機関につなぐ方法として
- 所属する法人のケアマネジャーに依頼する
- 地域の居宅介護支援事業所一覧を渡す
- 地域包括支援センターを紹介する
などが考えられます。
サービス担当者会議に出席する
利用者は「こんな生活を送れるようになりたい」という希望をもって介護サービスを利用しています。
サービス担当者会議は、介護サービスの利用を通して利用者が望む暮らしをどう実現していくかを検討する会議です。
会議の場では、生活相談員に次のようなことが求められます。
- サービス利用中の利用者の様子を伝えること
- 新たな課題が発生していれば解決方法を検討すること
- 利用者のニーズに対して所属する事業所でどんなサービスを提供できるか提案すること
これらを発信するためには、実際にケアを担当している介護職員や看護師、リハビリスタッフから、しっかりと情報収集をして担当者会議に挑むことが重要です。
利用契約を結ぶ
契約書と重要事項説明書の内容を説明し、利用者または家族などの代理人から署名をもらいます。
加算や請求の項目は専門用語が多く、ただ読み上げるだけでは利用者に伝わりません。
要約したり別の言葉に言いかえたりして、分かりやすく説明する必要があります。
生活相談員は所属する事業所の介護サービスについてのプロです。
質問されたら的確に答えられるよう、契約書と重要事項説明書の内容は確実に頭に叩き込んでおきましょう。
フェイスシートを作成する
利用者の情報がまとめられた書類を、フェイスシートといいます。
- 基本情報
氏名、生年月日、住所、緊急連絡先 - 健康状態
現在の健康状態や既往歴、アレルギー情報、服薬状況 - 機能評価
日常生活動作(ADL)や認知機能の評価 - 社会的背景
家族構成、生活歴、趣味、嗜好など - 特記事項
日常的にケアやサポートが必要な項目
フェイスシートには、その人らしいケアを提供するために必要な情報が詰まっています。
スタッフがいつでも最適な支援方法を選択できるよう、常に更新しておくことが大切です。
個別サービス計画書を作成する
ケアマネジャーから交付された居宅サービス計画書(ケアプラン)と生活相談員がアセスメントした情報をもとに、利用者一人ひとりに合わせた個別サービス計画書を作成します。
※特別養護老人ホームでは施設ケアマネが作成する施設サービス計画書に沿って支援が行われるため、生活相談員による個別サービス計画の作成は行いません。
個別サービス計画書に規定の様式はなく、事業所独自のフォーマットを使用します。
- 利用者及び家族の意向
- 生活全般の解決すべき課題
- 長期目標
- 短期目標
- サービス内容
- 留意事項
などの項目について記載し、スタッフが介護サービスを提供する際の指針となるよう作成します。
サービス内容に事業所の機能と特色を入れる
利用者の課題を解決するために、所属する事業所でどのような介護サービスを提供するか。
『サービス内容』の欄では、事業所のもつ独自の機能や特殊を示すことができます。
モニタリングを行う
個別サービス計画書を作成し、利用者や家族からの同意をもらったら、実際に介護サービスが提供されます。
モニタリングとは、事業所の介護サービスが適切に行われているか、個別サービス計画の内容が利用者の現状に合っているかを定期的に確認することです。
- 介護サービスが個別サービス計画書に沿って行われているか
- 支援の方法は適切か
- 目標の達成度はどのくらいか
- 利用者はサービスに満足しているか
- 新たな課題はあるか
モニタリング報告書は、生活相談員の主観ではなく、実際にケアを担当する介護職員や看護師、リハビリスタッフからの情報や視点を取り入れて作成されるべきもの。
日頃から利用者の状態をよく観察することはもちろん、介護記録に目を通したり、スタッフとミーティングを行うなどして、事業所内でしっかりと情報共有することが大切です。
他職種が連携して作成したモニタリング報告書を、生活相談員が毎月ケアマネジャーに提出します。
地域ケア会議に出席する
地域包括支援センターや市町村が開催し、医療・保健・福祉に携わる幅広い分野の専門職や地域住民が参加する地域ケア会議。
地域ケア会議の目的は『高齢者の個別のケースに対して支援を充実させること』と『それを支える社会の基盤を整備すること』の2つです。
地域ケア会議では個別事例の集積によって地域全体の課題を見つけ出します。
地域のニーズを満たすサービスの検討は事業所の発展にもつながるため、生活相談員が地域ケア会議に出席することには大きな意義があります。
生活相談員に必要なコミュニケーション能力
生活相談員は利用者やその家族だけでなく、多くの関係者と密に関わります。
コミュニケーションとは、ただ会話をすることではありません。
『察する力』と『伝えきる力』が必要です。
察する力とは、相手の言葉の裏に隠された本当の気持ちを汲み取ったり、本人も気づいていない潜在的なニーズをすくい上げたりすること。
伝えきる力とは、言葉、声のトーンや大きさ、表情、身振り手振り、環境などあらゆるものを活用して、こちらが伝えたい情報を相手が正確に受け取れるようにすることです。
利用者やその家族とのコミュニケーション
介護施設の利用を始める際、利用者や家族と一番最初に顔を合わせるのが生活相談員です。
生活相談員の印象の良し悪しで施設全体の印象が決まります。
利用者の意向や要望を敏感に察知できる感受性、こちらの意図することを分かりやすい方法で伝えられる説明力が、生活相談員の武器になります。
看護師や介護職員、リハビリスタッフとのコミュニケーション
利用者により良いサービスを提供するために、もっとも重要と言っても過言ではないのがスタッフとのコミュニケーションです。
生活相談員は事業所に一人しかいないことも多く、自分から他職種との信頼関係を築く努力をしないと孤立します。
スタッフが生活相談員の話に耳を傾けてくれなくなったら、生活相談員が聞き取った利用者のニーズも置き去りに。
当然、介護サービスの質は低下してしまいます。
多職種が同じ目標に向かって協力できるよう、日頃から風通しの良いコミュニケーションを心がけることが必要です。
さまざまな関係機関とのコミュニケーション
ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員、病院のソーシャルワーカーなど、他機関との連携も欠かせません。
専門職とのコミュニケーションで大切なのは、適切なタイミングで、適切な情報を、適切な相手に伝えることです。
いつ・誰に・何を伝えるのかは、ケースバイケースで判断しなくてはいけません。
基本的には家族→ケアマネの順に連絡しますが、急変時は真っ先に訪問看護に一報を入れた方が良いこともあります。
忘れものがあったとき、荷物を準備しているのは家族ではなくヘルパーの場合も。
担当者会議などを通して、他機関の専門職がどのように利用者に関わっているかを把握しておくことで、スムーズな連絡調整につながります。
また、利用者がサービスを利用しない日も地域で安心して暮らしていくためには、生活相談員をはじめとする事業所のスタッフが地域住民と良好な関係を築いていることも重要です。
このように、生活相談員が関わっていく対象は幅広く、質の高いコミュニケーション能力が求められる仕事だといえます。
現役デイサービス生活相談員が感じる仕事のやりがい
利用者や家族の役に立てたと実感できる
生活相談員は介護施設のスタッフの中でも、利用者や家族と個別でお話しできる機会が多い職種。
私の一番のやりがいは、利用者さんがサービスを通じて生きる意欲を取り戻してくれることです。
父は脳梗塞を起こしてから麻痺のある体を恥ずかしがって人に会うことを嫌がっていました。
でも、デイサービスには「昔からの趣味だった囲碁ができる人がいるから楽しい」と喜んで行きます。
最近では老人会の囲碁サークルにも行ってみようか、と考えているようです。
利用者さんのポジティブな変化をご家族に教えてもらったときは「この仕事をやっていて良かった」と、とてもうれしい気持ちになります。
年齢を重ねても働きやすい
介護の仕事の中でも、生活相談員は身体介護を担当する職種ではないため、体の負担が少ないことが大きなメリットです。
年齢とともに体力勝負の介護職をつづけることが不安になったとき、生活相談員へのキャリア転換も選択肢の一つ。
生活相談員は若すぎない方が、利用者やその家族から安心感をもたれやすいです。
私は20代の頃から生活相談員をしていますが、はじめは「こんな若い人にまかせて大丈夫?」「介護の不安や負担なんて、この人に分かるのかしら?」と思われないよう、常に自分の言動に注意をはらって背伸びしていました。
介護職員から生活相談員になると、現場での経験がスタッフとのコミュニケーションにも活きてきます。
積み上げたキャリアや人生経験を活かして長く働くことができるのも、生活相談員の仕事の魅力です。
キャリアアップができる
生活相談員は、対外的な相談業務のほかに、請求や苦情対応など介護施設の運営に関わる仕事もしています。
必然的に介護保険にも詳しくなり、施設長や管理者にキャリアアップしていく人も少なくありません。
私もいつかはひとつの事業所を任せてもらえるようになりたいと思いながら、日々の業務に励んでいます。
生活相談員の役割と仕事の魅力まとめ
生活相談員はさまざま関係機関と連携し、利用者やその家族の相談援助を行う職種です。
仕事内容は多岐にわたり、大変だと感じることも多いですが、その分大きなやりがいも感じられます。
この記事から仕事の理解が深まり、希望をもって生活相談員の仕事に飛び込んでもらえたらうれしいです。