生活相談員をしていると、避けては通れないのが利用者やその家族からのクレーム。
クレーム対応には時間とエネルギーが必要で、精神的なダメージもつきものですよね。
しかし、厳しいご意見の背後には、利用者のサービスに対する期待や不安が潜んでいます。
問題が起きたときこそ、利用者の感情と真摯に向き合い解決に向けて着実に行動することで、より深い信頼関係を築くことができるチャンス。
この記事では、利用者満足度を向上させる、生活相談員のためのクレーム対応術をご紹介します。
クレームを円満に解決する5つのステップ
クレーム対応には次のような型があります。
- 謝罪
- 傾聴
- 調査と分析→改善策(対応方法)の提示
- 謝罪
私はデイサービスに寄せられるどんなクレームも、この手順に沿って対応しています。
①『不快にさせたこと』に対するお詫びの気持ちを伝える
クレームに発展するような出来事の直後は怒り心頭で、まくし立てるように話す方がいます。
まずは「ご不快な思いをさせて申し訳ございませんでした」「不手際があったようで申し訳ございませんでした」とお詫びし、
「もう少しくわしく状況を教えていただけますか?」と続けましょう。
こちらに謝意や話を聞く姿勢があると分かると、大抵の場合、相手の興奮も少しはおさまるものです。
「どちらに非があるか分からない状態で簡単に謝ってはいけない」という人もいますが、私ははじめの謝罪はかなり重要だと思っています。
相手に冷静になって話してもらうことで、クレームの内容が格段に分かりやすくなるからです。
それに、謝ったことが原因でトラブルが悪化するような目にあったことは一度もありません。
②クレームを最後まで聞き、相手の心情に共感を示す
ときに「それは違います」「こちらにはこういう意図がありまして」と口を挟みたくなることがあります。
しかし、グッとこらえて相手の話を最後まで聞きましょう。心配しなくても、こちらの主張はあとでしっかりできます。
問題がどこにあるのか正確に把握するために、 この段階では相手にクレームを言い切ってもらう方が得策です。
話を聞くときは、要所要所で「はい」や「ええ」と神妙な声色で相槌をうち、
「そのようなことがあったのですね」
「それはご不快な思いをさせてしまいましたね」
「ご心配をおかけしてしまいました」
と、内容に合わせて相手の気持ちに共感を示します。
③クレームの事実関係を調査し、原因を分析する
ここまでくると、多くの場合クレームを申し立てた方も落ち着いています。
相手が話し切った、クールダウンしたな、と感じたら、ようやくこちらのターン。
クレームの内容が軽微で、解決策がすぐに提示できるものなら、その場でお伝えします。
事実関係の調査が必要だったり、解決策をスタッフと検討しなければならないものであれば、いったん持ち帰る(電話を切る)ことになります。
話を終わらせるときは
「お話を聞かせていただきありがとうございました。重大な問題と存じますので、一度スタッフと話し合い、原因を究明した上で、再度〇〇様にご連絡いたします」
と、クレームを真摯に受け止めたことが伝わるよう表現すると良いでしょう。
④解決策(対応方法)の提案
いったん持ち帰ったクレームは、早急に原因を調査し、対応方法を検討します。
そして、管理者やスタッフと相談した対応方法をクレーム申し立て者にお伝えし、問題の落とし所を決めていきます。
クレーム対応はスピードが命
対応方法はできるかぎり当日中、遅くても翌日の朝には申し立て者に連絡しなければなりません。
連絡が遅くなればなるほど、相手は「ちゃんと考えてくれているのか」と不安になり、さらなるクレームにつながってしまいます。
営業日や問題の性質上、次の連絡までに時間がかかる場合には、「いついつ何時までにご連絡する」とあらかじめ伝えておくことが必要です。
⑤お詫びとアフターフォロー
解決策や対応方法にご納得いただけたら、最後に誠心誠意お詫びの気持ちを伝えます。
場合によっては、管理者や当事者とご自宅にうかがって謝罪することもあります。
今後また同じことが起こらないよう、業務の改善策もあわせてお伝えしましょう。
提示した改善策を徹底して守ることで、失った信頼の回復につながります。
私はクレームが解決したあとも、時間を空けてときどき「お困りのことはないですか?」と確認するようにしています。
『雨降って地固まる』ではないですが、クレームを受ける前よりもグッと距離が縮まり、良い関係を築けたケースも少なくありません。
クレームを円満に解決する方法まとめ
介護施設に寄せられるクレームを円満に解決する方法について、現役デイサービス生活相談員が実践している5つのステップをご紹介しました。
クレームは介護施設のサービス向上に繋がるだけでなく、生活相談員がコミュニケーションスキルや問題解決力を高めるチャンスでもあります。
厳しいご意見も真摯に受け止め、誠実に大切することで、利用者やその家族とのより深い信頼関係を築けるようになりたいですね。